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一九八九年、四月、ルーズソックを履いた足が夕日に照らされたアスファルトを踏んで帰宅していく。
「明日は土曜日か……」と、十六歳の坂下(さかした)美樹(みき)は思った。
土曜日は午前中で授業は終わり、放課後はみっちりと茶道部のシゴキが始まる。
まだ美樹は正座に慣れておらず、このことを母親に愚痴ったら、「ご先祖様は足軽大将で、お茶が大好きだったとさ、あんた、その子孫だよ、茶道やるのは運命かもしれないね、がんばんな!」
なんて笑い、なにかといえば、お尻をピシャリと叩く。
これだけは小さな子供のころと変わらない。
満開の桜並木を眺めながら、(ガキじゃないんだから、やめてほしい)と、思う美樹だった。
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