第四章 実行

1/46
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ

第四章 実行

 「そろそろ起きなさい」と、堀越に言われて美樹は目を覚ました。  「は! ここは? あれ?」  いつも通っている茶道部の茶室だ。  ただし三十年の歳月が畳や虫食い柱を古くしていた。  茶室だけじゃない。彼女を起こした堀越も老けていた。  それもそのはず、四十六歳の堀越なのだ。  「ごめんね、麻子さんが静電気防止服も着せずにおくるって、よほど焦っていたのね」  「うわあ! ゲロゲロ!」  「なに、驚いて」  「先生、あのその」  「老けてるって言うんでしょう? 当然よ、わたしは四十六歳の堀越だもん。十年も経てばしわも増えるわ」  「ごめんなさい」  「謝ることはないわよ、いきなり相手が老けたら、そりゃ驚くわ」  「それじゃ三十六歳の先生は?」  「あんたが気絶してるあいだに元の時代に帰ってもらったよ、ここじゃ、あの年齢のわたしは使えないからね、もろに正体がわかっちゃう」  「ああ、状況に頭ついていかない。先生、ここは何年の世界ですか?」  「正真正銘、二〇一九年よ、嫁が自分の子供かわいさに余計な真似をするから、どんどん話がややこしくなっていくのね、まったく」  「麻子さんは?」
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!