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第四章 実行
「そろそろ起きなさい」と、堀越に言われて美樹は目を覚ました。
「は! ここは? あれ?」
いつも通っている茶道部の茶室だ。
ただし三十年の歳月が畳や虫食い柱を古くしていた。
茶室だけじゃない。彼女を起こした堀越も老けていた。
それもそのはず、四十六歳の堀越なのだ。
「ごめんね、麻子さんが静電気防止服も着せずにおくるって、よほど焦っていたのね」
「うわあ! ゲロゲロ!」
「なに、驚いて」
「先生、あのその」
「老けてるって言うんでしょう? 当然よ、わたしは四十六歳の堀越だもん。十年も経てばしわも増えるわ」
「ごめんなさい」
「謝ることはないわよ、いきなり相手が老けたら、そりゃ驚くわ」
「それじゃ三十六歳の先生は?」
「あんたが気絶してるあいだに元の時代に帰ってもらったよ、ここじゃ、あの年齢のわたしは使えないからね、もろに正体がわかっちゃう」
「ああ、状況に頭ついていかない。先生、ここは何年の世界ですか?」
「正真正銘、二〇一九年よ、嫁が自分の子供かわいさに余計な真似をするから、どんどん話がややこしくなっていくのね、まったく」
「麻子さんは?」
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