第8話 空白の記憶

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「お待たせしました」 アルフレードは大き目の紙をテーブルに広げ、俺にペンを手渡してくる。 こうして、漸く話を進めようとした時、俺は再度クリスの方を向いた。 「クリス、話を聞くのは一向に構わないが、現場には連れて行かないからな」 「え……でも」 「万が一の場合があったら、対処できない。アルフレードもそう思うだろ?」 そう問いかけると、アルフレードは少し困った表情のまま口を閉ざす。 そして、アルフレードの中で答えが決まったのか漸く口を開いた。 「いえ、やはり連れて行きましょう」 「は、何で?」 「クリスは一般の女性で、戦闘力もなければ身を守る術を持ちません。 二階堂先生は、その晃とかいう男性にクリスの事を話したのですよね、では我々が出かけた隙に何者かに襲わせる可能性だってある。 そもそも、現段階ではその晃が一体どんな行動を取ってくるのかまるで検討がつきません。 その場合、大切な人は側に置いとく方が安全だと思いませんか?」 「……そうだな」 アルフレードの言葉に、過去、マリアンナを失ったときの出来事が思い出される。 あの時、俺が追いかける事が出来れば、俺がマリアンナを怒らせる様な事がなければ行動を共に出来ただろう。 そうすれば、あんな結末を迎える事はなかったかもしれない。 確かに、そんな後悔をさせるくらいなら、側に置いていた方がいいか。
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