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慣れというのは本当に恐ろしい。
自分の中にあるはずの“情”という存在をこうも簡単に打ち消すのだから。
だが、俺はそのまま化け物に成り下りたくはなかった。
その為、“食の道を極める”と言う命令を同族の捕食へと意識的にすり替え、あの男を殺せないなら何か他の方法で無力化出来ないものか考える様になった。
奴への復讐こそが、俺を保つ唯一の存在。
復讐こそが、俺が生きる理由なんだ。
我に帰り時計を見ると、針は夜の9時ごろを指している。
晃を学校で指導してから、もう5日が経過していた。
そろそろ精神も落ち着いて来た頃だろうか。
「さて、今更昔を懐かしんでも仕方がない。
今は出来る事をするか」
体をゆっくりと起こして立ち上がと、窓から見える月を眺める。
あの男の定めた未来を変える方法が見つかるまで、俺はいくらでも足掻いてやる。
このままでは、死んでもマリアンナに顔向け出来ない。
そんな思いから、また1歩、外へと足を踏み出した。
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