オークとエルフの話

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オーク族は人間の中でも芸術や文化に対して理解が浅いと言われているが、実際のところ美しいものがなにより好きな種族であった。ただ、美しいもののためならどのような醜いこともできたが為に、美への理解が無いと周囲に誤解されているのだ。その中にあってロックは理性的な方で、たいていのオークであればロータスの見目だけで仮に正当性が叔父夫婦にあったとしてもロータスの側についたであろうが、ロータスと出会った当時に旅で得ていた人脈をできるだけ頼って彼の潔白を調べた。田舎の王族とはいえ蝶よ花よと育てられたらしいロータスは絵に描いたような深窓の公子で、おっとりとしたあまり権力欲もほとんど持ち合わせていない人物であるにも関わらず、王都を目指す事、エルフ王の庇護を得る事になると人が変わり、屋敷から出たことがなく一族や仕える家臣としか言葉を交わしたことが無いと言うだけあって偏見無く無垢に素直に旅の出会いを受け止め学び成長 しながらもロック達との関わりが深まるのを恐れている節を見せ、ロータスという人間が見せる内面のちぐはぐさがロックとしては不信感を持たずにはいられなかったのだ。 とはいえ、結局のところロックも美しいものを無条件で好むオークの端くれである。王都へ向かう過程で故郷に母を残していたこと、ただ一人自分だけが何人かの犠牲のはてに逃げ延びてしまった事を深く恥じ入り、矮小な己を勇猛なロック達が呆れ見限るのが怖かったのだとロータスから涙ながらに語られてしまえば(それより前に大体のロータスの事情はロック達にはわかっていたとはいえ)その健気さに打ちのめされ、もうこれ一生護ろうとロックの庇護欲を奮い立たせた。 一生護ろう、ロックはロータスに対し内心で誓っていたがお互いが一族の長である。ロータスが王都に着き、父の後継者としてエルフ王の後ろだてを得れば別れが訪れるはずだった。 それではロックは、ロータスを一生護れない。 だからロックは、ロータスの故郷を手の者を使って滅ぼさせた。 お互いが立場のある身であるからこそ共にいられないというのなら、立つ場が無くなればいい。簡単な話だ。     
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