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1.遠藤みゆ子、チョコ(らしき物)を渡す。
「あの、宮内くん、これ……。よかったら、食べて」
遠藤みゆ子にそう言われて“それ”を渡されたのは、昼休みが終わる十分前、渡り廊下でだった。
弁当を食べ終わった後に僕は友達と校内をプラプラして、教室に帰る前に自販機で買ったパックのヨーグルトドリンクを飲みながら、「次の英語タルイよな~」なんてアホみたいにぼやいたりしていた。
そんな僕にいきなり声をかけてきたのが、同じクラスの遠藤みゆ子だ。
突然のことに思わず「えぁ?」と間抜けな声をあげて、僕はみゆ子の顔と差し出された“それ”を交互に見る。
──かしわ屋のチョコクリームメロンパン。
みゆ子の手の中にある、ビニール包装された歪に丸い形のそれ。
うちの中学公認の近所のパン屋でも一、二を争う人気商品で、僕の大好物でもあった。
ましてや、弁当だけじゃ満たされなかった今の僕の腹の中になら、すんなりと収まってくれそうな代物だ。
……いや、それよりも何よりも。
普段そんなに話もしないような遠藤みゆ子が唐突に僕に声をかけてきて、しかもパンをくれるというこの行為に、ひたすら驚いてしまっていた。
しかも、おとなしいけどクラスの中でかわいい部類に入る、この遠藤みゆ子が。
──何で、みゆ子が急に?
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