1.遠藤みゆ子、チョコ(らしき物)を渡す。

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 僕は、コクッと唾を飲んだ。  さっきまでズゾゾとストローを吸って飲んでいたヨーグルトドリンクの味が、口の中に蘇ってくる。  みゆ子の様子はというと、チョコクリームメロンパンを差し出したまま、上目で恐る恐る僕の様子をうかがっているようだった。  何でみゆ子が急にこれをよこしに来たのかはわからないけど──このままぽかんとしているわけにはいかないし、それにまだお腹も空いていることだし……。 「ああ……うん、サンキュ──」  と手を伸ばし、有り難く受け取った、その時──。 「おいおい、お前ら何してんの?」 「お、チョコクリームメロンパンじゃん」  一緒に校内をブラついていた友達のおんちゃん(恩田)と山さん(山田)のコンビが、僕とみゆ子の間を割って入るように覗き込んできた。 「つか、バレンタインの日にチョコクリームって!おいおい、みやっちが遠藤ちゃんからチョコもらってんぞ!」 「……はっ?」  大げさに騒いで冷やかし始めるおんちゃんに、僕はぎょっとした。  ぎょっとするどころじゃな。体中がカッと火照ってしまった。  ──確かに、今日は2月14日だ。  その日にたまたまチョコ味のパンもらったからって……。  何でバレンタインのチョコをもらったことになるんだよ!  そんなバカな話あるか!
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