5人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は、コクッと唾を飲んだ。
さっきまでズゾゾとストローを吸って飲んでいたヨーグルトドリンクの味が、口の中に蘇ってくる。
みゆ子の様子はというと、チョコクリームメロンパンを差し出したまま、上目で恐る恐る僕の様子をうかがっているようだった。
何でみゆ子が急にこれをよこしに来たのかはわからないけど──このままぽかんとしているわけにはいかないし、それにまだお腹も空いていることだし……。
「ああ……うん、サンキュ──」
と手を伸ばし、有り難く受け取った、その時──。
「おいおい、お前ら何してんの?」
「お、チョコクリームメロンパンじゃん」
一緒に校内をブラついていた友達のおんちゃん(恩田)と山さん(山田)のコンビが、僕とみゆ子の間を割って入るように覗き込んできた。
「つか、バレンタインの日にチョコクリームって!おいおい、みやっちが遠藤ちゃんからチョコもらってんぞ!」
「……はっ?」
大げさに騒いで冷やかし始めるおんちゃんに、僕はぎょっとした。
ぎょっとするどころじゃな。体中がカッと火照ってしまった。
──確かに、今日は2月14日だ。
その日にたまたまチョコ味のパンもらったからって……。
何でバレンタインのチョコをもらったことになるんだよ!
そんなバカな話あるか!
最初のコメントを投稿しよう!