牛を飼う魔女のおはなし

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牛を飼う魔女のおはなし

  山ぶかい小さな村の話です。このあたりの村では、どの集落にも、魔女が住んでいます。アンナのお母さんも魔女です。  近くの集落には、薬作り名人の魔女や、水晶玉占いで有名な魔女もいます。ところが、アンナのお母さんは、魔法をぜんぜん使いません。魔女のくせに、牛を飼って暮らしているのです。牛の乳で作るチーズやバターは、村人にとても喜ばれています。でも、やはり魔女といえば薬に占い。そんな期待をそがれて、不満に感じる人もいました。アンナもそうでした。アンナの家には薬草を煮る大釜も、占いの水晶玉もありません。魔女らしいものといえば、古ぼけた箒が一本だけ。とは言っても、お母さんは空を飛ぶどころか、箒にまたがる姿を見た人さえいません。箒は掃除に使うだけでした。  アンナは毎朝、牛の世話を手伝います。イヤイヤですけれど。なかでも、牛糞を運んで一箇所にまとめる仕事が、イヤでした。だって、長靴の裏は、いつも牛糞の臭い。女の子なのに! アンナは泣きたい気分です。     
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