牛を飼う魔女のおはなし

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 学校が休みの日には、牛乳やチーズを村中に配達するのもアンナの仕事でした。ピルスナー家には、アンナの同級生の男の子トーマスが住んでいます。乳製品なんかを配達する姿は、ぜったい見せたくありません。同級生、それも男の子には特に。  日曜の朝でした。今朝も、もちろん牛の世話です。牛舎のなかの牛糞を見て、アンナは考えました。あたしだって魔女の血を引く娘、習ってなくても、意外と魔法が使えたりして。ようし。アンナは牛糞をみつめながら、心を集中し、念じました。  「牛糞よ牛糞よ、自分で歩いて、糞置き場まで行け」  何も起こりません。さらに強く念じました。すると、驚いたことに、牛糞は、ふわりと宙に浮き、ひとかたまりとなって、滝のようにアンナの頭に降り注ぎました。  水場で服を洗っていると、通りがかったお母さんが、横着しようとするから、バチが当たるんだ、と言いました。  いくら水浴びをしても、なんとなく臭いが残っているようで、配達にいくのは、ひどく気が滅入りました。おまけにピルスナー家で牛乳を受け取りに出てきたのは、運悪くトーマスでした。アンナが、ムスッとして無言で牛乳を手渡すと、トーマスも困ったような顔をして、黙って受け取りました。     
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