0人が本棚に入れています
本棚に追加
お父さんには、そんな高級な考えはなくて、ただ、料理がめんどうだし、食べても美味しくない、と思っただけなのでした。
バケツを逆さにして蟹を海に逃してやるお父さんをみて、お母さんは思いました。まるで、負けそうになった将棋の盤をひっくり返す駄々っ子みたい、と。何しろ、お父さんは、今日、結局一匹も釣れませんでしたからね。
妹蟹が、ひとり嘆き悲しんでいると、向こうのほうで、ドボドボという音がしました。あわてて駆け寄ってみると、いなくなった蟹たちが、みんな戻ってきたのでした。蟹たちは、再会を喜びました。
やがて、日も暮れて、オタモイ海岸には平和が戻って来ました。
(終)
(5枚!)
最初のコメントを投稿しよう!