おひなさまのダイエット

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 ネズミにしてみれば、濡れ衣もいいところですが、姫君に恋焦がれるネズミは、不平一つ言うことなく、知恵をしぼって、ついに妙案を思いつきました。姫君の体型を目立たなくするには、他の人形たちを太らせればいい訳です。  ネズミは、姫君の隣でひっそりと暮らすお内裏さまや、別の箱の中で寝ていた三人官女や、五人囃子に、どんどん食べ物を運び、無理矢理に食べさせました。三月三日までに何が何でも太るべし、これは姫君からの厳命である、と言い添えて。姫君も、最後の数日は、絶食して体型を戻し、ネズミの尽力に報いたのでした。  そして、ひな祭りの数日前になりました。キミちゃんと、両親は、協力して、雛人形を天井裏から運び出し、赤い毛氈を敷いた雛壇のうえに、うやうやしく、大切な人形を並べました。数日食べていない姫君と、ゲップが出るほど食べ続けた他の人形は、なんとか体型のバランスが取れていました。  「雛人形って、こんなにポッチャリしてたっけ?」  そうお父さんが呟くと、呆れたように、お母さんが答えました。  「馬鹿ねえ。人形の体型が変わるわけがないじゃない。やっぱり、ウチの雛人形は美形揃いね。色白で、そして、ふくよかで」  キミちゃんは、なんとなく、去年よりも人形が成長したような気がしましたが、気のせいだと考えて、黙っていました。     
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