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夏の終わりのある日。大海原の上空で、分厚い黒い雨雲となったしずくたちは、誰もいない海の上に、激しい豪雨となって、降ろうとしておりました。強風と、激しく上下する波も揃って、大騒ぎになりそうです。
そうして、しずくたちが、バシャバシャと海面に落ち始めたときです。気づくと、嵐の真ん中に小さなヨットがいて、まるで木の葉のように、巨大な波に小突き回されているのです。たったひとりの船乗りが、必死に帆をたたみ、船を操ろうとしていましたが、ほどなくヨットは転覆し、海の底へと沈んでしまいました。船乗りは、救命胴衣を着けていましたので、荒波の間に浮かんでいました。しずくたちは、この冷たい海の中で、この男は、はたして何日生きるだろうか、と暗い気持ちになりました。
翌日、嵐が止んでみると、船乗りはまだ生きていて、海面に浮かんでいました。今度は、海面に強い日差しが照りつけました。こんな大量の水の中にいながら、飲む水のない男は、喉の渇きに苦しみました。海水を飲むと、塩分のせいで余計に喉が渇くのです。
しずくたちは、なんとかしてやろうと思いました。そして、男のまうえで寄り集まって、小さな雨雲となり、ほんの少しの雨を降らせました。それがしずくたちにできる精一杯でした。男は、天に向かって口を開け、雨水を飲みました。そうして命をつないだのです。
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