しずくの思い出

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しずくの思い出

  わたしたちが住む地球には、とてもたくさんの水があり、水は世界中を巡っています。長い長い、果てしのない旅です。  しずくは、海流になって大洋を巡り、蒸発して雲になり、雨になります。山に降った雨は、集まって川や湖になります。動物の喉を潤し、草木を育てます。  もっとも動物に飲まれるのは、とても珍しいことです。ほとんどのしずくたちは、ただ海を巡り、雲になり、雨になり、誰に出会うこともなく、また海となり、ぐるぐると地球を回り続けるだけなのです。  ですから、しずく同士の雑談では、珍しい体験をした者は、大変な人気です。誰もが聞きたがるので、引っ張りダコです。  しずくたちの様々な体験談のなかでも、やはり人間がらみの話が、いろいろと変化があり、話にふくらみもあって、聞き手から珍しがられます。  「オレは、魚に飲まれて魚の体液になって、人間の釣り師に釣られて、焼き魚になって食卓に上ったよ」  そのあと、どうやってこの海まで帰ってきたのか。それは言わぬが花でした。  「ぼくは、地下水になって、泉から湧き、そこで人間に、ポリタンクに入れられて、街まで運ばれ、喫茶店で美味しいコーヒーになったんだ」     
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