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一時間後、見た目はとても美味しそうなカレーが出来ました。それを一口食べた賢一は、目を白黒させました。
「ま、まずい。うぇー!」
みゆきはそれをみてニヤニヤしました。
「ふーん、そんなに? どれどれ。あー、これは確かにまずい」
味見したお母さんも首をかしげました。
「おかしいなあ。見てたかぎり、別に変なことはしてなかったはずだけど」
お父さんも、一口食べて、黙ってしまいました。
誰もが無言になるほど、その料理は文句なくまずかったのです。
たまらず、お兄ちゃんが叫びました。
「こんなの、まずくて食べられないよ」
みゆきは、言い返しました。
「味なんかどうでもいいって、お兄ちゃん言ってたでしょ? お兄ちゃん、明日からも、わたしの作った料理を食べる? それとも、お母さんの作った美味しいごはん?」
答えは聞くまでもありませんでした。
次の日から、お兄ちゃんは、お母さんの愛情のこもった手料理を、美味しい、美味しいと言いながら、バクバク食べました。そして病気をする前よりも元気になりました。
みゆきはお母さんから料理の特訓を受けることになりました。料理をする前に、みゆきは、心のなかで食材にそっと話しかけました。
「今度は頼むわよ、とびきり美味しいお料理になってちょうだい」
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