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美味しい? 美味しくない?
みゆきのお兄ちゃんの賢一は、こないだ、はじめて大きな病気をしました。高熱や、吐き気で、とても辛い思いをしました。
病気のせいか、賢一は、ちょっと暗く、いじけて、ひねくれてしまったようです。体が弱ると、心も弱るのかもしれません。病気で何度も吐いたせいか、そのあと、何を美味しいと言わなくなりました。家族みんなが心配しましたが、退院してからもそれは変わりませんでした。
お母さんが心をこめて作ったご飯を、賢一は、つまらなそうに、もそもそと食べたのです。
「賢一、ご飯、美味しい?」
ある日、お母さんが、おそるおそる尋ねてみると、賢一は、不機嫌に答えました。
「別に。どうでもいい。食べ物なんて、どうせ胃に入ってしまえば、ドロドロのゲロのもとになるだけなんだ。口の中でだけ美味しくたって、別になんの意味もないよ」
お母さんは夕飯の後、台所で後片付けをしながら、黙って、そっと涙を拭いていました。それを見たみゆきも、とても悲しくなリました。なんとかしなければ。
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