フェイバリット・フロッグ

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 雨の日だけに現れる、カエルの着ぐるみをまとった人さらい、「ファニー・フロッグ」。  美少女ばかりを狙い、さらわれた子は依然として行方不明のまま。犯人の手掛かりは「カエルの着ぐるみ」という目撃情報のみで、それ以外証拠を一切残さず、警察の大規模捜査にもかかわらず、その正体はようとして知れない。  殺人鬼説。某国の工作員説。人身売買組織説。宇宙人説などなど、様々な噂が流れていたが、実際にさらわれるターゲットに選ばれてしまった主人公の少女「渚みさき」は知ることになる。その着ぐるみのなかにいる美少年「法月ノリト」と、彼の目的を…………。  タイトルを言っても、まず知る人がいない超マイナーなライトノベル「ファニー・フロッグ」シリーズのあらすじ。  某ECサイトのレビューには「既視感のあるシーンの連続」とか、「キャラ造形が類型的すぎ」とか、批判するメッセージが大半で、数件の絶賛のレビューが浮いている。その一つを書いたのは、私だ。  私はフリマサイトでたまたま見つけたこの本を、表紙のカエル男のイラストに惹かれて購入し、下の名前が私と同じ(小説は平仮名で私はカタカナだけど)主人公に大いに共感して、ファニー・フロッグワールドのトリコになった。作者は「アマドリ」のペンネームと謎の鳥のイラストのみで、略歴にも小さな賞の受賞歴が書いてあるのみで性別、年齢など、個人情報が一切ない。  真っ暗闇の学校生活からほんの少しだけでも別世界に連れて行ってくれたお礼も込めて、生まれて初めてファンレターを書いて送りたかったのだが、出版社のツイッターに訊ねても、「作家さんのポリシーでそういうものは受け取れないんです」と断られてしまった。  そして私は、再び病んだ。
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