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「そう。ある日ね、ベッドで寝ていたところに、変な動物が来て私に言ったの。寿命と引き換えに魔法を使えるようにしてやるって。ただ制限多くて、魔法一回につき一日分の寿命を使うし、延命させるような魔法は使えない。死ぬ前に治療法が見つかりずっと生きられるかもしれない奇跡を願って現状維持をするか、魔法を使えるようになって、悔いのない余生を過ごすか。私は迷わず後者を取った。だって起きるかわからない奇跡よりも、魔法のほうが魅力的じゃない?」  まーちゃんは笑う。記憶にある、僕の大好きな表情で。 「魔法でね、いろんなことしたの。この喫茶店は、昔からの夢だったから作った。未来を視たりもできたから、なんとなく家族に助言していい方向に進むようにしたり。この間ね、お父さんの考えたプロジェクトが成功して、昇進してたよ。ちょっとずるかもしれないけど、いいよね。みんなには、私の分も幸せになってほしいし。そしてーーみんなの記憶から私を消す魔法も使った。だって、みんな優しいから絶対に私のために泣いてくれるもん。苦しんでくれるもん。キミなんかきっと、とっても哀しんでくれる。そんなの、嫌だった。死んでいく私なんか気にしないで欲しかった。せっかく、誰もがーーキミが、幸せな方法でいなくなれると思ったのに……」  満ち足りた表情をしていた。現に、満足しているのだろう。自分のしたいことを魔法の力を借りてしてきて、残りの人生を謳歌していたのだろう。確かに僕も、ここ最近いいことが続いていた。運がいいなと思うことが多々あった。  それもこれもきっと、まーちゃんのおかげだった。だけど僕は、幸せなんかじゃなかった。全ては真っ白な記憶のせいで。     
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