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「ーーおまたせ。遅くなったわ~」
「全然。むしろこっちこそ、ごめん」
最近リニューアルされたばかりのカフェに呼び出した親友の瑠里子が申し訳なさそうな顔を浮かべて、窓越しに手を挙げていた。慌てて入り口に向かう瑠里子を目で追いながら、視線は彼女の胸までのくるくると巻かれて弾む長い髪に向いていた。店員に案内されながら、テーブル席に近づいてくるとパタパタと手で顔を仰ぎながら椅子に腰を下ろした。
「ごめんね、遅れちゃって。帰り際にやつがやりやがりましたもんで~」
「むしろこっちこそごめん。こないだ言ってた新人くん?」
「そそ!なんとかなったからいいんだけどさっ」
急に呼び出したのは自分なのに、瑠里子が遅れたことに対してもう一度謝罪の言葉を述べた。本来ならば、こちらから出向くべき所をどうしても、リニューアルされたばかりのカフェに行ってみたかったので、瑠里子に無理を言ってしまった。新しくなったばかりからか、店内は若干騒がしかったが、今日はそれも気にならない。あえて自宅ではなく、こういった人がいる場所に呼び出したのは、今の自分の心境がそうさせているのかもしれない。後は単純にカフェに行きたかったという理由が大きいのだが。
「で、なに、どしたわけ?電話じゃなくて会って話したかったんでしょ?...なに、喧嘩でもしたわけ?」
瑠里子がおもむろに口を開いたが、あ、という言葉を発して、左横にあるベルスターを押した。ポーン、という音と共に、店員さんが急ぎ足でテーブルに向かってきてくれた。
「花絵、何にする?先に飲み物頼んどこ」
「そうだね。私はアイスのジャスミンティーにしようかな。あ、あとポテトフライも下さい」
「えっ、...ぁあ、私はアイスティーをお願いします」
瑠里子がちらりと一瞬花絵を見たが、すぐ店員さんに笑顔を向けた。花絵はそれに気付いていたが、何も言うことはしなかった。店員さんが注文を繰り返して、確認したあと作業をしに戻っていった。
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