fatal affection

1/189
前へ
/189ページ
次へ

fatal affection

始まり  さて、何故か僕は見知らぬ草原にいた。夢の中かもしれないしそうでないかもしれない。ここは何らかの便宜的な空間ではないかと思っている。誰にとってどんな便宜があるのは分からない。とりあえずそういうものだと認識している。あるいは認識させられているのかもしれない。  ここの空気はずいぶんの湿気を含んでいた。だが別に不快感はない。むしろ爽快感すら覚える。激しい豪雨の後の澄み切った空気のようであった。彼女の髪は湿気をものともせずさらさらと風になびかせていた。彼女?一体いつからそこにいたのであろうか。いるのは分かるのだが、果たして彼女は実在するのだろうか?手を伸ばして触れることが出来るのであれば少なくとも幻や幽霊といったものではないのは分かる。だが僕はそれをしなかった。出来なかったとも言える。ここでは僕の思っている行動に制限があるみたいだった。制限というよりとてもリアルな映画を見せられているような感覚だろうか。自身は主体的に行動できるにもかかわらず、その辺の草を触れてそれは実際のものだと感じることは出来るが、彼女に関してはどうも干渉が出来ないみたいだった。     
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加