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「だからね、分かるっているのがもう分っていないのよ。そういうものだと認識する以外ないのよ」僕は彼女に何者か問うべきじゃなかった。間違った質問をしてしまったようだった。
「その、すまないんだが、僕は重大な何らかの行動をする必要があるんだろう?君が何者かどうかはこの際置いておいて、僕はその時どうすればいいんだ?教えてくれ」
「それは具体的には言えないのよ。どうなるかは私にも分からない。だけどこれだけは言えるわ。あなたにとってとても大切に思っている人はいる?」
「ああ、いるさ」
「その人に対して信頼と愛情を持って接すること。それ以外言えないわね」
彼女はもう言いたいことは言い終えて、用事は済んだとなったら消えていなくなった。
「まだ聞きたいことは多くあったのに」僕がそうつぶやくと頭の中で甘えるなと微かに聞こえたような気がする。
致命的な症状にて
私が一番最初に思ったのはここが天国かもしれないということだった。しかし周りをよく観察していくうちにそれにしては生活感がありすぎると思った。テーブルの上には飲みかけのワインに一口だけかじられたリンゴ、作りかけのサンドイッチが置いてあった。私の体は全身が包帯にまかれていた。そして近くのごみ箱にはどす黒く変色した包帯が大量に捨てられていた。よく分からないが、私は誰かに救われたのだと思った。
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