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そんな思いが沸き上がるが、確かにあの頃の私はこうちゃんへの恋心を悟られないように必死だったかもしれない。
「光輝からお姉ちゃんの事聞かされたから、少しでも光輝の為に何かできないかなって思って、私と付き合ってることにしたら、寂しくなって光輝のこと意識するかもって提案したの……もちろん光輝はバカなこと言うなって笑ってたんだけどね……」
そこまで聞いて私は呆然とした。
自分のせいでここまでこじれたのかもしれないが、二人を思うならもう少しましな嘘をついてくれればよかったのに……。
そんな思いが頭を過る。
「ごめんね。今更その話をしているって事は……私失敗したんだね」
結衣の申し訳なさそうな言葉に、私は小さく「大丈夫」と答えた。
結局、自分の思いをひた隠しにして、勇気も持てず告白をしなかった自分が悪いのだ。
その後一言二言、結衣と会話をして私は電話をきった。
その様子にこうちゃんが私を見た。
「信じてくれた?」
不安げなその表情に私はコクリと頷いた。
「麻衣、俺は自分の気持ちに気づかないで、確かにいろんなこと付き合ってきた。でもずっと麻衣の事が好きだと気づいてから、麻衣に振り向いてもらえるように必死だった」
真摯に紡がれるこうちゃんの言葉に、私は涙が零れ落ちる。
まさか、こうちゃんに自分の気持ちが届くなどこれっぽちも思っていなかったし、一生この気持ちだけを抱えて生きて行く決心をしたところだった。
零れ落ちる涙をどうしても止めることができず、私は顔を手で覆う。
自分の言葉で伝えることができるチャンスがようやくめぐってきたというのに、私は言葉を発することができなかった。
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