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宇宙人の逆襲
十兵衛と春日局の別れは唐突であった。
城にいた十兵衛の元に大奥の使いがやってきて、春日局の危篤を知らせたのだ。
(なんだと?)
十兵衛が急いで駆けつければ、彼女はもはや虫の息であった。
「局様……」
十兵衛は春日局の側に座し、彼女の細い手を取った。
(夫でも子でもない俺が最期を看取ってよいのか……)
そんなためらいがないでもない。だが十兵衛は春日局を見捨てたくはなかった。
春日局とは因縁浅からぬ。彼女の密命で十兵衛は家光の辻斬りを止めた。
その時の報酬が三池典太である。三池典太といえば、後世には国宝に指定されるほどの刀工の手による刀だ。
どうやって春日局が手にいれたのかはわからないが、十兵衛は三池典太によって幾度も死線を越えられた。
あるいは十兵衛にとって最大の助力者であったかもしれぬ。
その春日局が十兵衛の目の前で、息を引き取ろうとしている。
十兵衛は春日局の手を固く握りしめた。
「ご安心めされよ」
十兵衛は春日局に告げた。
死出の旅にか、それとも実子と噂される家光についてか、それは十兵衛自身にもわからなかった。
やがて春日局は息を引き取った。死因は不明とされる。
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