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宇宙人の逆襲
「そうよ、楽しまなくっちゃもったいないわ」
「左様ですな」
「……ねえ、あなたは女買いに行くとかないの? わたくし、吉原に興味あるんだけど」
「あ、あのね!」
十兵衛は狼狽して叫んだ。家の女中などは、十兵衛の一人言が多くなったのをいぶかしんでいた。
***
そんなある日の深夜、遂に十兵衛と天女春日局は魔物と遭遇した。
(こいつは!)
月下に照らされた着流し姿の十兵衛の勇姿。
三池典太の刃が月光を反射して輝く。
十兵衛の眼前五メートルに佇む異形。
(……ぬっぺらほふか!)
かつて御神君家康公の駿府城に、肉の塊のような異形が現れたという。
顔も何もない肉の塊に手足を生やしたような姿をしていたと、伝えられている。
今、十兵衛の前に佇む異形は、伝え聞くぬっぺらほふの姿そのままではないか。
「くらいなさーい!」
天女春日局が仏法(ぶっぽう)光輪(こうりん)をぬっぺらほふに投げつけた。
が、全く効果はなく、光輪は消え失せた。
仏法光輪は全ての仏敵を切り裂く光の刃だ。
それが通用しないとなれば、ぬっぺらほふは怪物魔物ではない――
「……上々!」
十兵衛、叫んで駆け出した。
ぬっぺらほふが魔物でないならば、刀で斬るのも可能のはず。
捨身必倒、一打必倒。
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