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宇宙人の逆襲
端から見つめる天女春日局や、眼前の女闘士が戸惑うほどに十兵衛の気配は変化した。
色は即ち姿なり。
姿は即ち是(これ)、空なり。
十兵衛の意識は迷いを遠く離れ、天地宇宙と調和している……
女闘士も十兵衛の姿が霞んで見えるような錯覚に陥っていた。
十兵衛には殺気どころか闘志すらないからだ。
見失いそうな十兵衛めがけ、女闘士は踏みこんだ――
「イヤアアアッー!」
夜の空気を震わす女闘士の気合。
薙刀の刃先が空を裂いた。
十兵衛は右手側に刃を避けている。
同時に三池典太を女闘士の薙刀の柄に打ちこんでいた――
ガアン!と火花が闇に散った。
これは斬るための一刀ではなかった。
「う!」
女闘士が一瞬うめく。柄から伝わった衝撃に手が痺れたのだ。
その隙を衝いて十兵衛は女闘士に身を寄せている。
無言で十兵衛は地を這うような足払いを放つ。
女闘士は左足の踵辺りを払われて、後ろへと倒れそうになった。
「おっと」
十兵衛は差し出した右手で女闘士の肩を受け止めた。三池典太は左手に持ち変えている。
生死を懸けた一瞬の後には、彼は爽やかな笑顔を見せていた。
「まだやるかね?」
十兵衛の問いに――言葉が通じるとは思えないが――、女闘士は呆然としながら体の力を抜いた。もう、やる気はないらしい。
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