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僕は背を伸ばして精いっぱい胸を張って喋り始めた。
「差し替えられたページの散文詩は暗号のメッセージでした。
一見すると意味不明な文章ですが、ある暗号鍵を使うと意味が分かる。
暗号鍵を使ってメッセージを読み解くと、
答えはロッカーの中に。
となるように、散文詩は書かれていたんです」
「ふむふむ、すぐに気付いたようだね。ロッカーの中から見ていたが」
「先輩がミステリや謎解きが好きなことは知っていましたし。
それに僕にとって、この部誌の原稿を先輩と一緒に書いたのは大切な思い出ですから、すぐに分かりました。
そう、メッセージを読み解くための暗号鍵は五七五ですね?
最初から五文字目の文字を拾い、その文字から七文字目を拾う。で、またその文字から五文字目を拾う。
これを繰り返していくと、メッセージが出来上がるという寸法です」
散文詩のタイトルもヒントになっていた。
「つまりこれは二人の共通の思い出を鍵にした素敵な暗号だったわけです。いかがですか、先輩」
それなりに名探偵らしく喋ってみたが、どうだろう。先輩は満足してくれただろうか。
「まさしく全くその通り。優秀な後輩を持って私は嬉しいよ」
そっぽを向いていた先輩がようやく僕の顔を見て笑った。顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに笑うので、僕もなんだか照れてしまう。
「さっき君は“僕にとって”原稿を一緒に書いたのは大切な思い出だと言ったが、私にとっても得難い大切な思い出だよ」
先輩はそう言うとはにかみながらうつむいてしまった。そのまま沈黙が訪れたので、意を決して僕は聞いた。
「ところで、そろそろ返事を聞かせて貰えませんか?」
「い、今ので分からなかったかな!? にぶいぞ、君は!」
先輩には悪いがもう少しアホのふりを続けて、先輩の口からちゃんとした答えを聞き出そう。
雰囲気になんとなく流されたくはない。
「言っておくが君が度々アホのふりをして私を泳がせていることは気付いているからな!」
あ、バレてましたか。
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