第2話 初めてのお使い

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 クレイは私の腕に薬品を塗って皮膚を柔らかくしたあと、人の目には見えないのではないかと思うほど、細く透明な糸で丁寧に傷を縫い合わせた。糸を切り、軽く磨きをかけて滑らかにし、別の薬品をひと塗りして糸を溶かすと、元の白く美しい腕に戻っていた。 「これでよし。じゃあ、ちゃんと気に入られるようにしっかりやるんだぞ」  クレイは細い目を更に細めて笑い、私にリュックを背負わせた。  買い物のために持ってきた大きなリュックは、この店のノベルティである。たくさんのポケットがあり、人間所有の自動人形であることを証明するIDカード入れ(私のように人間の子供と見紛う自動人形が昼間にひとりで歩いていると、補導される可能性がある。カードはそのとき提示する)がついていて、二重になった底には緊急用の予備バッテリーが仕舞ってある。 「今日はお使いをして帰るのか」 「はい。ベーカリースズノと、雑貨屋カラリに行きます」 「ああ、スズノのパンは私も好きだ。気をつけて帰れよ」 「はい。お世話になりました」  クレイは私を見送りに外へ出ると、心配そうにいつまでも店先に立っていた。    *
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