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「ごめんごめん。子供の頃好きだった男の子にそっくりだったから、びっくりしてさ」
奥様も同じようなことを言っていたが、奥様とおかみには随分歳の差がある。
「よくある顔でしょうか」
「こんな美少年がよくいるもんですか。だから覚えてたのよ。しかし、見れば見るほど彼に似てるわ。声までそんな感じだった気がするよ」
「あなたよりずっと歳上の、屋敷の奥様の初恋の方がモデルなのだそうです」
「へええ。昔から、初恋の美少年の定義は変わらないってことかなあ。町外れにある屋敷って、あの幽霊屋敷のこと?」
私は頷いた。昨日の私の認識は、やはり外れていなかった。
「魔女が住んでるって噂だったけど、まさか自動人形を弟子にするとはね」
そうしているうちに、工房から店の主人と思われる男性がカンパーニュを運んできた。丸々と大きなカンパーニュは上部がぱっくり四つに割れ、こんがりしたきつね色に薄く小麦粉が施されている。
おかみはひとつを手際よくパラフィン紙に包み、金色のインクで鈴の絵が印刷されたクラフトの紙袋に詰め込むと、同じ袋にママレードの小瓶を忍ばせた。
「カンパーニュだけで結構です」
「あなたが可愛いから、これはおまけよ。奥様によろしく伝えて」
おかみは笑ってウインクをすると、私に紙袋を渡した。化粧っ気のないそばかすが浮かぶその顔は、最初に振り返ったときより若く見えた。
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