第3話 幽霊屋敷と魔女

3/11
前へ
/72ページ
次へ
「魔女はいないのでしょうか」  ジュラルミンの台に横たわった私の薬指をコンピュータに繋ぎ、眼球のコアをチェックしていたクレイは、モニターから視線を外すと、びっくりしたように私のことを見た。 「なんだい、突然」 「奥様に、『奥様は魔女ですか』と言ったら『魔女なんていないのよ』と言われました」 「そんなこと言っちゃったのか……いないよ、魔女なんて」 「前にスズノのおかみが、幽霊屋敷には魔女が住んでいると言っていました」 「それはたとえだよ。人間はね、自分がよくわからないことや怖いと思うもののことを、幽霊とか魔女とか言ったりするんだ。奥様は魔女じゃない。君の代金もきっちり現金でお支払い頂いたしね。トランク一杯のお札を見たときは仰天したけど、いい経験だったなあ。さあ、もうお喋りしないで目を瞑ってごらん。一度接続を切るよ」  私は目を閉じた。するとオートスリープが作動して、ぷつりと意識が途切れた。    *
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加