第3話 幽霊屋敷と魔女

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 三か月点検にカンパーニュの買い出しと目的は果たしたが、私はもう少しこの町に関する見聞を広めたいと考えた。それはあの屋敷が幽霊屋敷、そして奥様が魔女と呼ばれていることの誤解を解く方法はないかと思ったからだ。  町のデータベースと言えば図書館であると思った私は、バスを一本遅らせて帰ることにした。  小学校の近くに建つ町にひとつの図書館は、経年を感じさせる古いモルタルの小さな建物だった。木立のような書架が並ぶ開架は森のようで、昼間でもやけに薄暗い。それでも放課後には学校帰りの子供たちで賑やかになり、決して活気のない場所ではなかった。  書架の横を通り過ぎ、真っ先に電子書籍が読めるコンピュータ室へと向かう。マシンから直接データを読み込むため、薬指にコネクタを繋いだところで肩を叩かれた。 「いくらあなたが自動人形でも、それはちょっとね。せっかく少年の姿をしてるんですもの、少しは本を読むふりをしてみたら?」  振り返ると、そこにいたのは眼鏡をかけたふくよかな熟年の女性だった。首から下げた司書の証には、レナードという名前が記されている。 「自動人形の私が紙に書かれた文字を読むことは、合理的ではありません」 「合理を追及するのなら、そもそも人型にはしないのよ。どちらの子かしら?」  そう言われて、私は大人しくコネクタを外した。ここで問題を起こして奥様に連絡が行けば、こっそり屋敷と奥様のことを調べていたことがわかり、また叱られてしまう。
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