第3話 幽霊屋敷と魔女

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 そこに突然、母子(ははこ)と思しき女性と少年が越してきたのが二十六年前のことらしい。 「母子ですか。名前はわかりませんか。どこから来たのです」 「この五十年でいろいろ法律も変わったから、あまり個人情報は書けないのよね」 「なぜわざわざ、荒廃した屋敷に越してきたんでしょう」 「さあ、詳しくはわからないけれど、とんでもなく安くなってたとは思うわ」 「なるほど」 「もしかして、あなたはあのお屋敷の子なんじゃないの? 主人に聞けば一発でしょうに、わざわざ図書館で調べるなんて何かあるのね」  私が何と答えたものか言葉を探していると、レナード司書は私に顔を近づけ、声を潜めた。 「これは個人情報で、司書の掟を破ることになるけれど……屋敷のその子は一度だけ、図書館に来てくれたことがあるのよ。ちょうど、私が司書になったばかりの頃だった」 「なぜ、その屋敷の子供だとわかったのです」 「貸出カードを作ったの。書かれた住所があの屋敷のあたりだったから、私もびっくりした。そのあたりにはあの一件しか家がないもの。その子はとても喜んで、今度は本を借りに来ますと言っていたけれど、それから昨日まで、一度も姿を見かけることはなかった」 「昨日まで?」  レナード司書は私の顔を見て微笑んだ。 「その子は、あなたによく似た男の子だったのよ」    *
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