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「私はここにひとりで住んでいて、身の回りのことはすべて自分でやっていたの。でも次第に体を動かすのが辛くなってきて、少しずつ、自分の死について考えるようになった。私には親しい身内も友人もいないから、ある日突然死んだら誰も死体を片付ける人がいないし。それで、あなたを買うことにした。既製品のほうが安かったけど、人生最後の大きな買い物だと思ったら、とことんこだわりたくなっちゃって。だから完全オーダーメイドであなたを作ったの。あなたのモデルはね、私の初恋の人なのよ」
「左様ですか。それで、奥様が私に望まれることは何ですか?」
はにかんで笑う奥様を無視するような私の答えに、奥様は少し機嫌を損ねたようだった。すぐに取り繕う言葉を探したが、それより早く、奥様は姿勢を正すと厳しい目になった。
「まずは家事全般、あと庭の手入れの補助と、裏には小さい菜園があるからその世話。外への用事も全部あなたにお願いしたいわ。私は料理と読書と花の手入れだけしていたいの」
「かしこまりました。近日中にこなせるよう学習いたします」
「明日には名前をつけてあげるわね」
「お願いいたします」
陽が沈むあたりに、私の付属品と充電器が届いた。ここには来慣れているらしい配達員への対応も、早速私の仕事となった。配達員の青年は私が出ると非常に驚いた顔をしたが、ここへ来たばかりの自動人形であることを説明すると、感心したように頷いた。
「いつも格子の隙間からサインだけされて、荷物は門前に置いておくんだ。ちゃんと受け取りを確認したいのに、僕の姿が見えるうちは絶対に門を開かない。まさか、フルオーダーの自動人形を導入するとはなあ。君が来てくれて僕も助かるよ。置きっぱなしの荷物がどうなっているか、気を揉んでいたからね」
青年が乗った鴉の絵が描かれた配達トラックは、ゆっくり町に向かって走って行った。
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