第3話 幽霊屋敷と魔女

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第3話 幽霊屋敷と魔女

 連日の陽射しは次々と、鮮やかな夏の野菜を実らせた。  朝食の前に、菜園の野菜と卵を取ってくるのが私の仕事になった。朝露に濡れた丸いナス。はじけそうなほど真っ赤に熟れたトマト。たっぷりと水分を含んだキュウリ。  自動人形の私でも、植物のことは不思議に思う。どれも小さな種の一粒であったはずなのに、土と水と太陽の光だけで、どうしてこれほど色形の違うものを実らせることができるだろう。  私がトウモロコシの実り具合を確かめる後ろで、鶏がけたたましく鳴いている。彼らは依然私に慣れない。しかし、彼らの攻撃を躱して卵を取ることはできるようになった。  雌鶏は一羽潰して奥様が食べてしまったが、代わりに今、小屋の一角には孵化したひよこが二羽隔離されている。  ひよこは生まれたときから私のことを知っているためよく懐き、私が小屋の前に立つと、餌をもらえることを期待して近寄ってくる。鶏とは少しも親しくなれないが、ひよこのことは守るべき存在として愛らしく思う。    *  屋敷には全自動式の洗濯乾燥機があったが、奥様は洗濯物を外に干すことを好まれた。私が庭で物干しをしていると、気まぐれに奥様が手伝ってくださることもある。それは心地よい風がシャボンの香りを遠くまで運び、陽射しが穏やかに降る日であることが多い。 「今年はトマトが豊作過ぎたわね。食べるのが追いつかないわ」
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