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そうだ。目的が達成されたのだから鎌倉の言うように帰ればいいのだが、釈然としない。ちゃんと伝わっていない気がする。結局、なす術もなく俺は図書室を出た。
ーー次の日の放課後。
俺は今日も鎌倉の向かいに座った。が、鎌倉を前にすると空気に飲まれ頭が真っ白になって、言おうと思ったことを忘れてしまう。
『なに!?邪魔しないで』
やっぱり今日も邪魔者扱い。一体何の邪魔なのか。それと、何故、雰囲気を変えているのか。聞きたかったが、どうもこの空気がそうさせてくれない。張りつめた空気。静かすぎる空間。
外ならちゃんと言える気がした俺は、図書室の外で鎌倉を待った。
午後6時30分。
完全下校を報せるチャイムが鳴る。
すぐに鎌倉が出てきた。が、いつもの髪を下ろした眼鏡の方の鎌倉 里奈だった。
「おつかれ」と、足並みをそろえて声をかけた。明らかに目が合ったのに無視して歩く鎌倉。返ってくる台詞も予想はつく。数パターンはシミュレーション済みだ。
「なに?」と、鎌倉。
「一緒に帰ろうと思って」ここはストレートに。
「は?怖いんだけど」
だろうな。
「いや、この前の、ちゃんと謝ってなかったから。怒鳴ったりして悪かった。ごめん」
よし、言えた。
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