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「別にいいよ、そんなの。こっちもイライラしてたから。ちょうどそこに高崎がいただけ」
「え?はけ口にされた!?俺……じゃなかったらどうする!?」
「高崎くらいじゃない?私に声かけてくるの」
そうなのか。
確かに教室じゃ誰かと喋ってるとこ見たことないな。でも、図書室の鎌倉は別人だろ。
「男は言い寄ってこないのか?」
俺は何を言っているのだ。台本にない台詞だぞ。
「面白いこと言うね高崎。私に?誰が?……あ、高崎がいるか」
「じゃなくて、図書室の鎌倉は雰囲気違うだろ」
「あぁ、そう言う話?そんな輩が図書室に来ると思う?……あ、高崎がいるか」
どっちも俺か。とりあえず謝れたから何でもいい。いや、良くない。
「高崎?もしかしてそれ、遠回しに告ってる?」
ほらな。俺が一番言い寄ってみえる。
「話を反らすな。俺が聞きたいのは、なんで教室と図書室では雰囲気が別人になるのかって」
「……眼鏡を通して読みたくないから」
「だから眼鏡とってるのか。髪は?」
「邪魔だから束ねてるだけ。高崎、いっぱい喋って喉乾いた」
はいはい。奢らせてもらいますよ。これで贖罪が完了ならお安い御用だ。しかし、天の神様はまだ俺を許してくれないようだ。財布の中身が空っぽだ。
「何しにきたの、高崎」
少なくとも、鎌倉に奢るために来たのではない。呆れた鎌倉は、小銭を俺に渡した。にやける鎌倉が怖い。俺は断ったが、手に乗せられた200円を返すタイミングを失くし、好意を受けることにした。
「120円までね。お釣り返してね」
なんか腹立つ。もとは俺が原因だけど、悔しい。この借りは明日絶対に返す。
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