3

4/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「別にいいよ、そんなの。こっちもイライラしてたから。ちょうどそこに高崎がいただけ」 「え?はけ口にされた!?俺……じゃなかったらどうする!?」 「高崎くらいじゃない?私に声かけてくるの」 そうなのか。 確かに教室じゃ誰かと喋ってるとこ見たことないな。でも、図書室の鎌倉は別人だろ。 「男は言い寄ってこないのか?」 俺は何を言っているのだ。台本にない台詞だぞ。 「面白いこと言うね高崎。私に?誰が?……あ、高崎がいるか」 「じゃなくて、図書室の鎌倉は雰囲気違うだろ」 「あぁ、そう言う話?そんな輩が図書室に来ると思う?……あ、高崎がいるか」 どっちも俺か。とりあえず謝れたから何でもいい。いや、良くない。 「高崎?もしかしてそれ、遠回しに告ってる?」 ほらな。俺が一番言い寄ってみえる。 「話を反らすな。俺が聞きたいのは、なんで教室と図書室では雰囲気が別人になるのかって」 「……眼鏡を通して読みたくないから」 「だから眼鏡とってるのか。髪は?」 「邪魔だから束ねてるだけ。高崎、いっぱい喋って喉乾いた」 はいはい。奢らせてもらいますよ。これで贖罪が完了ならお安い御用だ。しかし、天の神様はまだ俺を許してくれないようだ。財布の中身が空っぽだ。 「何しにきたの、高崎」 少なくとも、鎌倉に奢るために来たのではない。呆れた鎌倉は、小銭を俺に渡した。にやける鎌倉が怖い。俺は断ったが、手に乗せられた200円を返すタイミングを失くし、好意を受けることにした。 「120円までね。お釣り返してね」 なんか腹立つ。もとは俺が原因だけど、悔しい。この借りは明日絶対に返す。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!