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「明日は?」
「たぶん行けると思う」
「そうか。あんまり無理するなよ」
女子の部屋に長居しては色々まずいだろうから、この辺で帰ることにしよう。「玄関先まで送るよ」と鎌倉も立ち上がった時、鎌倉がよろめいた。俺は反射的に手を伸ばし、なんとか鎌倉も俺の手を取り倒れずに済んだ。
「大丈夫じゃないだろ?手も熱いぞ?顔も赤い」
俺は「ここでいい」と言い、お母さんに一礼して鎌倉宅を後にした。部屋を出る時に聴いた鎌倉の「ありがとう」は、やっぱり少し元気がなかった。
ーー翌日
鎌倉は学校に来た。
始業前に声を掛けると、鎌倉はノートを出して何かを書き始めた。
『大道具、まだ終わらないの?』
『うん。まだかかりそう』
『楽しそうだね、高崎』
『どうだろ。仕方なくやってるよ。そっちはどうなんだ?小説』
「書けなくなった。筆が進まない」
手を止めた鎌倉が辛そうに口を開いた。返す言葉が見つからない。そして、何も言えないまま始業のチャイムが鳴ってしまった。鎌倉のあんな顔は初めて見た。
今朝見た鎌倉の表情が頭から抜けないまま放課後になった。今日は図書室へ行こう。鎌倉が気になる。
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