1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
俺は大道具班に休むと断りを入れ、すぐさま図書室へ走った。いつもの席に座る鎌倉は、虚ろに窓の外を見ていた。とりあえず居てよかった。さりげなく隣に座り、読書しながら様子を伺った。
お互い何の言葉もなく、時間が過ぎた。
すると突然、鎌倉が話し始めた。
「なんで来るの!?邪魔しないで。ぜんぜん書けないよ……高崎」
ここに来始めた頃によく言われた台詞だけど、なにか感じが違う。鎌倉は今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。かと思えば、手を震わせながら書き始めた。
『高崎が来なくなってから、それからずっと』
「書けなくなった……。高崎……私……」
鎌倉がまだ何かを言おうとした時、チャイムが鳴った。完全下校の時間になった。この日、俺は鎌倉を家まで送った。そして、一言も話すことなく着いてしまった。
なんとなく気不味いまま別れたのを最後に、また図書室へ行かない日々が続いた。
あの日以来鎌倉とは言葉を交わしていない。
最初のコメントを投稿しよう!