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「あんさんあんさん。ちょいとお待ち」
自転車通勤で使う道で、仕事終わりの夕暮れどき。
少しずつ冷たい風が吹き始めた秋口。
大通りから一本入った川沿いの裏道で声を掛けられた気がした。
今年25歳になる私、神月沙耶。
155㎝と小柄な上に自転車に跨がった状態でふと、頭の上から降ってきた声に、キョロキョロと見回す。
「ここやここや」
声の主は白い猫のようだ。そこに猫がいるのは以前から知っていた。
会うと声を掛けていた。
喋れるからというわけでもなく。
それなのに。
ひと時固まると、ぱちぱちとまばたきし、目を擦る。
改めて見ても喋ってるのはその猫だ。
動くと首に赤い紐でつけられた小さな鈴がチリリンと鳴る。
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