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「なんのこちゃ、別にキワどいバイトなんかしてへんわ!」
多香子が窓の方を見ながら言い返した。
「してから説教しても遅いから言うとる。考えなしに目先の金だけ追いかけたら、さんりんぼうや、エエことなしの人生が続くんや」
関西ではよくないことが続くと、暦からなぞらえて『さんりんぼう』という人が多い。
「しょうもないこと聞いてるヒマないねん。帰るで、深雪」
かなりイラついた多香子に手を引かれて大倉くんと3人で地下鉄に乗った。
「俺もバイトあるからここで降りるわ」
大倉くんが降りて電車の扉が閉まると
「男前で勉強も出来るけど大倉もウチら(自分達)とおんなじ貧乏やからな、彼氏は無理!まして、貧乏人同志で結婚したら、“貧乏の拡大再生産”や」
多香子は言うけど、私は大倉くんと一緒の大学行って大倉くんに彼氏になってほしい。・・・でもお金、まずはお金・・・気鬱なとこへお母さんからメールがきた。
「『ちょっと今月電気代立て替えてもらえませんか』ってか?!」
隣の多香子が声に出して読んで、
「な、ウチらは切羽詰まって生きてんねん、タニヤンらみたいに呑気に塾してるジジィらとレベルがちゃうんや!」
(ほんまにレベルが違う・・・ほんまに困ってきてるんや)
去年、お父さんが働いてる工場がいつの間にか外国資本になってて、知らん間に毎年更新の契約社員になってしもたと、ボヤいてたけど、ほんまにほんまに進学どころやないんや・・・
「大丈夫なん?お金ある?大学の・・・」
「・・・」
「高額バイト・・・するか?」
耳元で多香子が囁いた。
次の日曜日、多香子と一緒に心斎橋駅に着くと
「着替えるで」
と、ファッションビルのトイレへ連れられた。大きなカバンから多香子が出したのは有名な”お嬢さん学校”の制服やった。
「これ・・・?」
「他にも”商売道具“は色々あるけど今日はここの学校、ホラ、早く着替える!」
言葉に追われて着替え終わると、駅のコインロッカーに着てた服を預けて歩き出した。雑居ビルが幾つも建つ中の一軒に入った。
「オハヨーさん、今日もヨロシクぅ!」
見るからに“軽い”男の人と私らと同じく制服の子が
何人もいた。
「座ってる間の時間、勉強出来るから問題集持っときや」
そういう多香子の後に続いて奥へ行くと”透明“だらけの部屋があった。床も椅子も透明。
「スカートは広げて、脚も広げて座るんや」
「え・・・?」
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