2.幼なじみ

2/11
前へ
/76ページ
次へ
 それは16年前の初夏のことだった。  吾輩は小さな公園の植え込みの間で、新しい主に相応しい人間を物色…もとい、待っていた。  じっと待つこと数時間、これはと思う人間はなかなか見当たらない。  そろそろ諦めて場所を変えようと思った頃、植え込みの中を見つめる4つの目と目があった。  「子猫だ。」  「子猫だ。」  声が被った。  「お前、迷子?」  少女が首を傾げて尋ねた。  「捨て猫じゃね?」  隣の少年が言った。  「つまり、飼い主はいないってこと?」  「捨て猫ならな。」  「ふぅん。じゃあ、私が飼おうかな。」  少女が吾輩を茂みの中から抱き上げた。  「ちょっと待て!俺が先に見つけたんだ。俺が飼う!」  少年が少女の腕から吾輩を取り上げようとした。  「何言ってるの!先に見つけたの、私よっ!」  そう言って少女はきつく吾輩を抱きしめた。  ちょっと苦しい。  「おい、そいつ返せよ!俺が飼うんだから!!」  「いやっ!!」  少女は少年の手を払うように身を翻すと、そのまま駆け出した。  「あ、待てっ!!美琴!!」  少年も慌てて追いかける。  というか、然程広くもない公園の中を二人はぐるぐると駆け回る。  「返せ!俺の猫だっ!」     
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加