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「――え…」
瞼から手を離した香与の目に映ったのは、ひらりと身を翻し、その色素の薄い長髪を空中へと靡かせた、“七”――竹之丞の姿だった。
「あまり無茶をするな」
竹之丞は刀を鞘に納めながら香与の方を見て静かに告げると、香与の身体を抱き寄せ、再び宙を舞った。
そして、そのまま、盗賊達が倒れている草むらから一寸離れた川沿いへと、竹之丞と香与は飛翔した。
香与は目を丸くしながら竹之丞に掴まった。
彼女からすれば、竹之丞とは何度か文を交わした事のある存在ではあったが、その時の竹之丞は『七』という娘の姿であったから、見たことのない竹之丞の姿に香与は思わず目を見張った。
……それに、しても、だ。
(かっこいい……)
香与は竹之丞の麗しい顔立ちを見上げながら、そう溜め息を吐いた。
竹之丞は修験者の様な白い軽装をしていた。
仕事の時はこの服装らしい。
香与は、心の中で辰之助を思い出していた。
竹之丞は、男くさい辰之助とはまた違う、性別を超越した美しさを放っていた。
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