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【二】
草木が生い茂る森を抜けると、けもの道から外へと抜ける道へと続く。
ザラリ、と灰色の瓦礫を踏み締める音が響いた。
額の下へと傾いた編笠をそっと持ち上げ、峰丸は空を仰いだ。
暗褐色の双眸に陽光が流れ込む。
心地の良い旅路だ。
峰丸は、被災以来、全壊した家から出ていき、仕官先を探す為に放浪の旅に出ていた。
その、崩落し瓦礫となっていく我が家で峰丸が見たものは何だったのか――。
それによって、彼の心に一つの決心が生まれた事は真実だろう。
1517年の七夕祭り以降、峰丸は、以前所属していた寺院の協力を得て、文書や荷物を運ぶ仕事――所謂“飛脚業”で生計を立てていた。
飛脚の仕事はハードだ。朝から夜まで、真夏の熱気が降り注ぐ日中も、厳冬の冷気と雪が吹き付ける早朝も、荷物を運び続けた。
そして、運命の1520年3月。仕事から家へと帰宅する途中で被災した峰丸は、割れる地面と落下する瓦礫のつぶてに負傷し、火災で焼け落ちていた我が家を目撃したのである。
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