猫の皿

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交際順調で秋になったある日、 弾みながら塾の三階教室へ上がる途中、 伊沢君と鈴木君の声がした。 「伊沢、明日は京都の子と  約束してんやろ?」 「ああ、一緒にライブ行ってから  ラブホやな、へへ」 「上手いことやってんの!  もうじき“ベア“とも  ラブホ行くんやろ?」 「まあ、“ベア“とは気長に焦らして  長い付き合いにせなアカンからな、  ボランティア程度にやるわ」 (“ベア“・・・熊、私の話・・・?) 「なんていうても関西大手の  工業薬品会社の一人娘やぞ、あいつ。  就活もいらんし、巧くやれたら俺、 “逆玉“、社長やで!  金も女も不自由なしや」 「ズル賢い奴やな、ハハハ・・・!」 ・・・の笑い声は仁子ちゃんのドアを 蹴破る音で停止。 気付かんかったけど後ろには 仁子ちゃんとタニヤン先生もいて 話を聞いてたんや・・・。 「ああ~~なるほどなあァ~、   勉強も出来んけど人間も最低!」 「なんやて?!」 「頭も性根もゴミや、言うてんねん。  そのゴミ頭で社長出来るか、ボケ!」 「女でもシバクぞ!」 「上等や、シバいてみぃや!」 伊沢君が仁子ちゃんに掴み掛かる前に 教室に飛び込んで二人の間に割り込んだ。 「伊沢君、アカン!  仁子ちゃんは柔道有段、   おまけに趣味はボクシング」 「え・・・」 ネズミ並みの速さで伊沢君と鈴木君は後退。 「勝負、あったか?」 タニヤン先生が入ってきた。
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