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ご飯に誘う。
いやみなまで言うな、遊びに行ったことあるくせに食事一回も行ってないんかいて、半年もあってそれはないやろかい、って。
もうガチでさ、彼女ガード固いのよ。昼からしか遊ばないし夜には帰るし、昼はダイエットで飲み物だけってスムージーとかしか飲まないし。ダイエット?どこに余分な肉が?むしろもうちょっとぽやっとしててもいいと思うんですけど、ほんと、女子分からんわー。
こう、仕事終わりに飲みに行こって行ったことなかったなーって、まぁそれにしてもご飯誘うとして、二人っきりだとこう、あれだし、やっぱ同期も呼んで。
でもなー、かぶんないだよなー、仕事終わりにちょうどよく集合するって難しいよなー、部署が違うと終わる時間がね、バラつくよね、どうしても。
そんな中彼女と一緒の部署になれた奇跡よ。はじめ知った時神に感謝したわ、生かしきれてないんだけどな!その奇跡。ヘタレ万歳。
って、もしや帰る感じ?お疲れ様でーす、ってすっげにこやか。
あ、俺の方に来た。マジで?奇跡きた?一緒に帰ろとかそんな感じ?
カッ、カッ、カッ、カッとヒールが音を立てる。これってさ女子って雰囲気でるよね。
「おつかれ。………ちょっと、全然終わってないじゃん。」
少し真ん中による眉、呆れの交じる眼差し。マスクで半分以上隠れてても感情豊かな彼女。でもやっぱ見てみたいよなー、マスクの下。
そんな彼女が軽く惚けていた俺に現実を突きつけた。
「それさ、課長に今日中に見せないといけないとか言ってなかったっけ?」
指さした先に積まれたファイル。パソコンの画面は昼からほぼ変わっていない。
要するに、ヤバい。
一瞬で固まる俺。やっちまった。慌てて資料を確認する。何とかなるか?いや何とかするしかない。
「頑張りなよー、そんじゃ!おさきに」
ぽんっ、と肩に触れた手を最後に軽やかに去っていく背中、俺の背中にはのしかかる期限。自然と重たい息をつく。
…………ああ、今日も素顔を見れなかった。
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