第1章 苦悩

3/3
前へ
/6ページ
次へ
 相模がリビングに入ると、娘の姿が見えた。  娘は相模に背を向け、ソファーに座りテレビを見ている。  相模はゆっくりと娘の背後に近付いた。  まだ少女の白くて細い首を見詰め、相模はガクガクと震える。  相模の中で理性が最後の抵抗を見せていた。  リビングから見えるキッチンで、妻は野菜を鍋で煮込んでおり、そんな夫の様子に気が付いていない。  相模の震えがピタリと止まった。  相模の中で最後の戦いが終わりを告げた証。  相模は娘の首筋に顔を近付けると大きく歯を剥いた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加