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「何が起きたんだ?」高田が叫んだ。
「分かりません。でも、未だ警告灯は消えていません。これはエレベータトリムの大きな不具合の可能性があります」
橋本が言った。
高田は、ある事故を思いだした。
アラスカ航空のMD83がカルフォルニア沖でエレベータトリムの不具合から墜落した事故と不具合の初期の症状が酷似していた。
「高橋さん、松本さん、大丈夫ですか?」
高田は客室の二人に声を掛けた。
「シートベルトをしていたので大丈夫です。何が起きたのですか?」
高橋が声を上げる。
「エレベータトリムの故障と思いますが、深刻な問題の可能性があります。次に急降下が発生したら生還出来ないかもしれません。最大限の努力はしますが・・」
その高田の声に、高橋と松本は目を見合わせた。
「松本君、最悪の事態を考えておく必要がある・・」
高橋の問い掛けに松本が大きく頷いた。
そして、自分の鞄の中からハガキサイズの二枚の紙を取り出すと、一枚を高橋に渡した。
高橋はそれを受け取ると、その紙にペンを走らせた。
同様に松本も紙に何かを書いている。
高橋は自分の鞄から”一冊の本“を取り出して、その紙を本の間に挟んだ。
その瞬間だった。
機体後部で大きな『バギ』という破断音が響いた。
機体は大きな姿勢の変動を起こし、再び急降下を開始した。
そして、今度は回復する事無く、愛媛県沖の瀬戸内海に墜落した。
北九州空港を離陸して18分後の事だった。
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