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終焉と未来
目を覚ますと、頭痛がした。忘れていた肺の痛みで体が熱くなる。これは、死病の症状そのものだ。
塞き止めていた何かが切れたかのように、不調が全身を覆っている。体が重くて動けない。
いや、実際に何らかの力が病を塞き止めていたのだ。そして、それをしていたのは。
「起きたみたいだな、お早う」
三日月のような、黄色の瞳が視界に入る。飄々としたその顔は、数ヶ月前と全く変わらなかった。
気絶前の一件が嘘だったかのように、服も天井も綺麗になっている。
まるで、時間が飛んだみたいだ。
そうだ。魔女を殺さなきゃ。殺して、心臓を奪わなきゃ。そうしなければ、僕は死ぬ。
でも、ああ、時間切れなんだな。
「…………魔法で病を止めてたのか?」
「うん」
「なんで?」
「分からなかった?」
矛盾だらけな行為の裏が読めない。結局、テオが何を考えていたのか一度も分からなかった。
「じゃあ、死に逝く君に最後の問いだ」
トンと、指先が胸を突く。
「君はまだ、魔女の心臓が欲しいか?」
「…………僕は……」
当初の決意を思い出しつつも、答えは直ぐに出なかった。
本音を言えば、今だって欲しい。今の自分のままで、この先の未来を見ていたい。
けれど、千年先まで心は生きていられるだろうか。心臓ではなく、心は――。
「なんてね。あげないよ。こんな心臓、もう誰にもあげない」
不可思議な発言に声が詰まった。見えた真実に頭が真っ白だ。
テオを見ると、自らの胸に手を宛てていた。
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