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眩しさで閉じた瞼を開く。視界に色が飛び込んだ瞬間、体が強張った。口を塞ぐ。冷や汗も溢れ出す。
そこには、腹部に穴を開け、血塗れで横たわるテオがいた。床も天井も、既に一面真っ赤だ。
「怖いだろう」
黄色の瞳が見開かれる。大怪我を負っているのに関わらず、平然と起き上がったテオは不適に笑った。傷から血が溢れ出す。
「死なないっていうのは、こういうことさ。もし、村が戦争に巻き込まれて、爆弾が落ちて来てもこんな感じ。大切な人が次々と死んでも、全て失ってでもこの体は死なない」
言葉を失っている間に、傷は見る見る塞がっていった。だが、一面に広がる血の海は悲惨さを残したままだ。
「この通り、体は治る。でも、心に穴が空いたら治らない。そのまま何百年も生きなきゃいけない。もし戦争なんて物がなくても、皆が皆、君より先に死に逝くだろう」
無情な瞳のまま、流暢に語る。恐らく、言葉はテオの経験そのものだ。
そこで始めて、生死観の天秤が揺れた。
「それはとても寂しい事だよ。それこそ地獄さ。だから人はリセットして、苦しみや寂しさを消すんだ」
魔女の心臓を食べると、千年間生きられる。けれど、それは食べた人間だけだ。
“死”という物は免れても、周りは次々移り変わっていく。愛しい人が出来るたび、心の傷は広がっていく。
テオは、そう言っているのだろう。
「それでも君は、生き続けたいのか?」
「……僕は、それでも……」
ぐらりと、視界が歪む。床に頭が勢いよく落ち、意識が薄れだした。目が掠れる。
テオが、僕を見下しているのが見える。その顔は無情で、やっぱり何も読ませない。
「魔法解けちゃったみたいだね。残念だよ」
――ああ、やっぱり死にたくない。
でも、そうだ。生き続けたくもないかもな。
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