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短命と不死
はたと目を覚ます。気絶前の光景を思い出し、素早く飛び起きた。
手先から、柔らかなシーツの感触が伝わる。
「起きたみたいだな、おはよう」
ぼんやりとしてしまった。命があったこともそうだが、状況に戸惑ってしまったのだ。
ここは明らかに室内だ。それも家の中である。
「君、聞いてるか?」
再度呼びかけられ、やっと気付いた。ハッとなり、聞こえた方へと顔を向ける。
真横の椅子に、小柄な人物が座っていた。月のような、黄色の瞳が視界に飛び込んでくる。
「もしや君、状況が読めてないな? だったら説明するよ。森を歩いてたら君が倒れたから助けた、それだけだ」
素早く説明をした人物は、少年のような容姿をしていた。とは言え、正確な性別はよく分からない。全身を黒い衣服で覆い、白く長い髪を括っている。
そして、姿はあるのに気配がない――。
気づいた時、体に大きく血が巡った。同時に、背筋に冷たさも覚える。
そうだ。目の前にいるのは、僕が捜し求めていた魔女だ。捜し求めて、殺そうとしていた存在――。
「生憎だけど、魔女はいないよ」
読心術でも得ているのか、表情一つ変えずに言い放たれた。急遽告げられた現実に、またも唖然としてしまう。
「……じゃあ君は」
「気が早いな。訊ねる前に礼の一つもないのか?」
「あっ、ありがとうございます……」
敵と認識するほどの邪気がない所為か、完全に相手のペースに乗せられてしまった。
そもそも、魔女でないなら標的ではないのだが。
「せっかちな君の為に答えよう。僕はテオ、魔女の手下さ」
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