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紹介を耳にし、疑いは起こらなかった。恐らく、事前に日記を見ていたからだろう。それが魔女の手下――テオのものかは分からないが、今はどうだって良い。
問題は、目的を果たせないことだ。
「……魔女はどこにいるんです……?」
無意識の内に何かが働いたのか、つい敬語になってしまった。体が、目の前の存在を恐れているのかもしれない。
「さっき出かけたところだよ。いつ帰ってくるかも分からない。諦めたまえ」
意図を悟られている事は、後半の七文字だけで十分だった。恐らく、どんな目的で森に入ったのか知っているのだろう。
けれど、テオは僕を排除するどころか介抱までした。一体何を考えているのか謎だ。
「…………待たせてくれと言ったら、どうします?」
怖ず怖ずと抵抗してみる。もちろん、本意は隠したままで。
今の所、テオに敵意はない。それに、目的を果たさなければ村には帰れない。
僕は、何があっても死ぬ訳には行かない。
「それなら満足するまでここにいるといい」
「えっ……?」
拒否を予想していた分、肯定に驚いた。テオは、厭きれた表情で腰を上げる。
「居たいんだろう? 僕もずっと退屈していたし丁度良い。ゆっくり話をしようじゃないか」
テオは、背中を向けて歩き出した。どこへ行くのかより、台詞に込められた単語に意識が傾く。
「……ずっと? もしや、君も不死なのですか?」
「その辺の話はお茶を飲みながらでも。どうだい?」
新たな可能性に、胸が熱くなった。思わぬ収穫に、笑みが漏れてきそうだ。
だが、堪えた。
「……是非」
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