15人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
テオは丁寧に紅茶を淹れ、手作りの菓子まで携えてきた。熟達しているのか、見栄えも香りも芳しい。
「で、何から知りたい? 答えられることなら何でも答えようじゃないか」
問いながら、紅茶に角砂糖を二個放り込み、渡してくる。その表情は、何だか楽しんでいるようにも見えた。
「……じゃあ、君の不死について。どうやってその体になったんです?」
「魔女の呪いだよ」
「呪い?」
顔付きを一切変えず、テオは紅茶を啜る。その様子からは、気配のみならず意図も感じられない。
「不死なんて呪いみたいなもんさ。君には分からないだろうけどね。長い時間は退屈すぎる」
「……それでも僕は!」
だが、読めなくても分かり合えない事は十分分かった。
長い時間があれば、好きな事に何度だって挑める。子孫の繁栄も、技術の向上も、今では考えられない夢だって抱ける。
それなのに。
「正直、僕は君が羨ましいのさ。だって君、もう直ぐ死ぬんだろう?」
いつしか握られていたフォークの先が、胸を指している。鋭い先端に、息を飲んだ。
現実を掘られ、心が急く。目前の人物が魔女ならば、僕は直ぐにだってナイフを翳すだろう。
その様子をイメージした瞬間、テオの瞳が光った。
「君、本当に魔女を殺す勇気はあるか? いざ目の前にした時、人型の生物を本当に殺められるか? そこまでしてでも永遠の命が欲しいか? 僕は忠告してるんだ。長い命を得たって意味なんかないと」
僅かに見えた、殺気のような物に怖気づく。後退りは出来ず、ただ壁に背を押し付けただけで終わった。
何の為に村を出たのか、今一度振り返る。
決意は十分してきた。それでも、魔女は愚かこの手下にさえ正面突破では敵わないだろう。ならば――。
「それでも欲しいって言うなら、納得出来る理由を教えておくれよ。そしたら僕は止めない」
「えっ」
策を導き出そうとした瞬間、聞こえてきた好都合な発言に動揺が止まらない。
「その時は、魔女を呼び戻しもしよう」
魔女の手下は――テオは魔女を殺したがっている。
そうとしか取れなかった。理由は分からないが主人を擁護する気はないと取れる。
「……さぁ、語ろうじゃないか」
深く底知れない笑みは、まるで僕を試すかのようだった。
最初のコメントを投稿しよう!